2014年4月28日月曜日

【清水和夫メールマガジン】第55号 アーカイブス 2013.3.25

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清水和夫メールマガジン〜自動車大航海時代〜
2013年3月25日 第55号
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次世代自動車の本来のあるべき姿について

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 ここ数年で盛り上がりを見せてきた電気自動車(EV)ですが、ようやくその熱狂が一段落し、自動車業界も落ち着きを取り戻しつつあるように感じています。
しかし、今度は逆にEVの雲行きが妖しくなってきているようにも感じます。今回から数回にわけて次世代車が本来どうあるべきかについてリポートします。

 日本では、あまりにも性急にEVの普及を急いだ結果、様々な問題が浮き彫りになってきました。航続距離と充電問題、バッテリーの耐久性やコストの問題をどう考えるべきなのでしょうか。未解決の問題に蓋をしてEVの都市伝説が一人歩きしてしまったミスリードを防ぐことができればと思います。

 今年の2月13日、こうした問題を正しく理解し、EVの正しい普及のあり方を議論するシンポジウム「検証、電気自動車の時代は来るか?」がNPO法人環境ベテランズファーム(EVF)によって開催され、私はパネルディスカッションのモデレーターとして参加しました。

 さて、このシンポジウムの裏のテーマは「そもそも次世代自動車の動力源はどうあるべきか?」といえるでしょう。

 自動車の根源とも言えるこのテーマについて闊達な議論が交わされました。日本を代表する自動車メーカーの専門技術者達が、それぞれの分野に分かれて基調講演をおこないましたので、まずはどんな内容だったのかそれぞれを簡単にレビューします。

マツダからは執行役員でパワートレーン開発本部長の人見光夫氏が内燃エンジンの可能性を示しました。
トヨタからは製品企画本部常務理事の小木曽聡氏がハイブリッドの未来ビジョンを明らかにしました。

マツダの人見氏はミスター・エンジンと呼べるほど、内燃エンジンを知り尽くした技術者であり、マツダの起死回生となったスカイアクティブテクノロジーのパワートレーンの生みの親です。小木曽氏は初代プリウスからハイブリッドの開発を担当してきており、ミスター・ハイブリッドの異名を持ちます。

日産からは小型系の車両開発を担当する執行役員の松村基宏氏が参加し、EVを中心とした次世代自動車の将来ビジョンを語りました。
そして、ホンダからは環境安全企画室室長の篠原道雄氏が水素燃料電池車を中心に、エネルギーの視点で次世代自動車の全体像を明らかにしました。

海外からはBMWジャパンからエンジニアリング本部長のルーツ・ロートハルト氏がEVの「iシリーズ」のコンセプトを発表し、Mモデルに次ぐ新しいブランドを立ち上げたことを明らかにしました。

ベンチャー界からは日本エレクトライク取締役の千葉一雄氏がニッチメーカーが考えるEVへの取り組み方を明らかにしてくれました。これらの名だたるパネラーの基調講演が続けられ、内燃エンジンの可能性をしっかりと理解した上で次世代自動車について議論が
おこなわれました。

 最近、化石燃料の枯渇や温暖化問題で内燃エンジンはまるで将来性がないような論調が多くみられますが、世界中の自動車メーカーが本気で取り組めば、まだまだ内燃エンジンは進化できると人見氏はプレゼンしました。

燃料もバイオマスや合成燃料の可能性があり、低炭素な内燃エンジンの可能性が見えてきているのです。内燃エンジンの可能性をしっかりと把握しないと次世代車のビジョンは正しく描けません。

 よく言われている効率ひとつとっても、多くの専門家が計算する前提条件は、ひと昔前の内燃エンジンの効率で試算されているのです。

人見氏はガソリンエンジンの次のステップは高圧縮+稀薄燃焼だと考えています。この頃には新しいコンセプトの環境適合型ターボ技術も実現しそうです。そのいっぽうで現状のダウンサイジングターボの将来性には疑問を投げかけています。

マツダは究極のガソリンエンジンとしてHCCI(均質予混合ガソリン自着火)を視野に入れて開発を進めているそうです。人見氏の自信あふれるプレゼンにパネラー達も納得していました。

 ディーゼルの将来性についてはどうでしょうか。
ディーゼルも排ガスと燃費とのトレードオフをいかに解決するのか、ある程度その道筋は見えているようです。しかし次世代自動車の予想の中でディーゼル車の比率はあまり多くありません。

IEA(国際エネルギー機関)のデータを見てもガソリンとハイブリッド、あるいはプラグイン・ハイブリッドは主流ですが、ディーゼルエンジンは各国の排気ガス規制が進むと、難しくなると考えられています。

しかし人見氏はポスト新長期規制を後処理触媒ナシでクリアした実績から、排ガスをさらにクリーン化することでディーゼルの可能性が潰れることはないと考えています。
この議論はユーザーのマインドセットも無視できませんが、トルキーで静かになった最新ディーゼルは走り味がプレミアムになったので、これからもしばらく人気が続くでしょう。

 人見氏からはほかにも面白いデータが示されました。燃費をどんどんよくする技術は重要ですが、同じ燃費改善率でも一ヵ月の走行距離が1000kmだとすると、リッター10kmと20kmのクルマで較べると燃料消費の差は50リッターとなり、それはそのままCO2排出量も半分となります。

しかし、燃費が優秀なリッター40kmのクルマが倍のリッター80kmになっても差
は12.5リッターにしかならないのです。つまり、燃費のトップランナーばかりを増やすのではなく、燃費の底上げをする必要があるわけです。日本のようなイナーシャウェイトごとのトップランナー方式によるカテゴリー分けでは限界がきているのです。欧米のようなメーカーの平均燃費(CAFE)の制度が必要かもしれません。

 次回はトヨタの小木曽氏が行ったプレゼンを解説したいと思います。

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Wheel Talk! 第27回ホイールトーク「日本の自動車産業はどこへむかおうとしているのか?」1/5(10分12秒)
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【世界のモーターショー】ジュネーブショー2013リポート1 / The 83rd Geneva International Motor Show 2013 (8分40秒)
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EVFシンポジウム「検証、電気自動車の時代は来るか?」part.1(25分20秒)
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EVFシンポジウム「検証、電気自動車の時代は来るか?」part.2(15分49秒)
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EVFシンポジウム「検証、電気自動車の時代は来るか?」part.4(12分14秒)
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2014年4月11日金曜日

【清水和夫メールマガジン】第54号 アーカイブス 2013.3.10

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清水和夫メールマガジン〜自動車大航海時代〜
2013年3月10日 第54号
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道路の通行区分から考える2030年のクルマ作り

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 今回は自動車の走る通行区分の話です。世界は右側通行の国が多く、日本のような左側通行の国はマイノリティといえます。そもそも、なぜ世界共通になっていないのか不思議に思う人もいるでしょう。しかし、各国それぞれ独自の理由や背景があるのです。今回はそういった理由や背景を解説し、今後どうなっていくのか現状から予想したいと思います。

 まず左側通行の日本ですが、諸説ある中で私がもっともらしいと思う説を紹介します。時は江戸時代(1603年〜1868年)にさかのぼります。参勤交代と呼ばれる当時の制度により、地方の武士は中央の江戸への定期的な出仕が求められ、整備された街道を長旅していました。そういった行き来によって武士が街道をすれ違うことが多かったのですが、武士は左腰に挿し物(刀)があります。そのため右側通行にしてしまうと、対向から来た武士と鞘があたってしまう恐れがあったのです。

この時代の左側通行の習慣が現代につながっているのかもしれないのです。おそらくイギリスもナイト(騎士)がいたので同
じく左側通行となったのではないかと私はにらんでいます。

 一方、ほかの欧州は右側通行の国がほとんどです。これは馬車の時代に右手で鞭を使うことが多いので、対向から来た馬を鞭で打たないように右側通行が多いのでは、といわれています。

一旦通行区分を決めてしまうと、道路はもちろん車もそれにあわせてハンドルの位置が決められてしまうため、政府としても国民としても一朝一夕には変えたくはありません。

しかし、スウェーデンのように周辺諸国にあわせて、従来左側通行だったのが1967年に変更した例もあります。これにはきっと大きな苦労があったでしょう。

さらに日本のように第二次大戦後、沖縄がアメリカの統治下にあったため、やむを得ずアメリカと同じ右側通行だったのを、日本返還後の1978年に左側通行に戻った例もあります。

つまり、英国の植民地だった過去がある国はいまでも左側通行が多いようです。逆にポルトガル、スペイン、フランスなどの植民地は右側通行です。アジアではそういったケースが混在しているのです。

 左側通行と右側通行の国を人口や台数で較べると、現状では中国をはじめとして右側通行の国が多くあります。左側通行の自動車市場は少し前まで日本とイギリスと南アフリカ、ニュージーランド、オーストラリアなどしかありませんでしたが、最近ではインドやインドネシア、タイなどの新興国で自動車保有台数が増加しています。

これらはいずれも左側通行で右ハンドルの国です。やがて2030年頃になると右ハンドル車の生産台数が左ハンドル車の台数を逆転するという予想もあります。インドやインドネシア、タイなどのASEAN諸国の成長はめざましいためです。

 クルマ作りについて述べるならば、以前は左ハンドル車のほうがペダルレイアウトに違和感がありませんでした。これは従来までのFF車の設計ではタイヤハウスの張り出しが車内のスペースに割り込んでしまっていたためです。

左ハンドルはタイヤハウスの張り出しをフットレストのスペースで吸収できるのです。反対に右ハンドルはアクセルペダルが左側に追いやられてしまい、小さなFF車ほどいびつなペダルレイアウトを強いられてきました。

そういった点で左ハンドル、右側通行には一定のメリットがあったといえます。しかし近年、右ハンドル車でもマツダの新型モデルやホンダの軽自動車、フォルクスワーゲン・ゴルフ7に代表されるMQBプラットフォームやポルシェの新型911など車体の設計に工夫を凝らしてこれを打破しています。

具体的に述べましょう。マツダCX−5の新しいプラットフォームの特徴は、フロントタイヤが50mm前方に移動したことです。タイヤが前進したことでホイールハウスがキャビンの中まで張り出すことがなく、アクセルペダルの位置をFRと同じような右側に配置できたのです。
 
 前述のようにFF車はどうしてもホイールハウスがキャビン内に張り出し、右ハンドル車のアクセルペダルが左に寄って配置されるケースが多くありました。このペダル配置の悪さは、日本のコンパクトカーの大きな欠点となっていました。知らず知らずに体を傾けて運転していたのです。

こうした不自然なポジションは、アクセルの踏み間違え事故の原因になっているかもしれません。踏み間違いはお年寄り、と決めつけていないでしょうか。ペダルレイアウトの不自然さが人間のミスを誘発していたのかもしれないのです。

さらに右ハンドルでもアクセルペダルをきちんと右側にレイアウトできるメーカーは今後新興市場で成功する大きなポイントを得るでしょう。先に述べたように世界の趨勢は右ハンドル車市場に傾きつつあり、そういった国々への進出をする自動車メーカーはプラットフォーム革新が求められているのです。

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【DST#Snow_03】メルセデス・ベンツML350ブルーテック / MERCEDES-BENZ ML350 BlueTEC 4MATIC vs NISSSAN X-TRAIL 20GT(加減速編)(6分17秒)
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【DST#Snow_03】メルセデス・ベンツML350ブルーテック / MERCEDES-BENZ ML350 BlueTEC 4MATIC vs NISSSAN X-TRAIL 20GT(旋回性能編)(7分44秒)
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【DST#Snow_03】メルセデス・ベンツML350ブルーテック / MERCEDES-BENZ ML350 BlueTEC 4MATIC vs NISSSAN X-TRAIL 20GT(一般道編)(8分17秒)
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EVFシンポジウム「検証、電気自動車の時代は来るか?」part.1(25分20秒)
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EVFシンポジウム「検証、電気自動車の時代は来るか?」part.4(12分14秒)
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EVFシンポジウム「検証、電気自動車の時代は来るか?」パネルディスカッション編 part.4(22分59秒)
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中央自動車道 笹子トンネル崩落事故検証に清水和夫が向った (2分51秒)
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アイスクライムに挑戦-清水和夫- / Ice climbing (7分59秒)
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リッター67kmのSUVが登場した / MITSUBISHI Outlander PHEV(7分4秒)
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アウトランダーPHEV開発者インタビュー / MITSUBISHI Outlander PHEV(15分15秒)
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ディーゼルエンジンは今 / MITSUBISHI D:5 D-Premium(9分48秒)
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ボルボV40発表会 / VOLVO V40(4分3秒)
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