2010年3月26日金曜日

プラグインハイブリッドの起源 <瀧本藤夫氏 寄稿>









3月8日付の日経ECO JAPANに掲載されたプラグインハイブリッドの記事について、ご覧頂いた瀧本藤夫さんからプラグインハイブリッドの起源についてとても興味深い意見を頂きました。ご本人の了承が得られましたのでここに掲載させていただきます。
瀧本藤夫さんは、以前スバルの富士重工業に勤めていらっしゃった方で2008年に定年退職され、現在は技術コンサルタントや翻訳をされています。

日経ECO JAPAN記事
http://eco.nikkeibp.co.jp/article/column/20100304/103329/

以下転載本文

Plug-In HEV (PHEV)の概念は、米国UC-Davis (カリフォルニア大学デービス校)のAndrew Frank教授とAndrew Burke博士を中心とする人達が最初に提唱し、1998年頃はCharge-Depleting HEVと呼ばれていた。これに対してプリウス等、外部充電の必要のない従来のHEVをCharge-Sustaining HEVと呼んでいた。

2001年頃になると、Charge-Depleting HEVに替わってGrid-Connected HEVという呼び方とPlug-In HEVという呼び方が混在して使われるようになり、最近になってPlug-Inが優勢になって来ている。(Gridは電力会社の電力供給網、Plugは日本でコンセントと呼ぶWall Plugから由来する)

90年代後半に米国DOE主催、SAE運営によるFutureCar Challengeという、学生達が低公害車を製作する大学間のコンペがあり、 Frank教授はこれに参加するため学生達にPlug-InコンセプトのHEVを作らせていた。その当時はクリントン政権のPNGVプログラムの目標に沿ってTaurusクラスの5人乗り乗用車であり、97年に96年型Ford Taurusをベースとした車体にホンダの軽自動車エンジンと5速MTを使い、Jouleという名前の車が作られた。

Frank教授はもともとCVTの制御が専門で、Jouleの次の車を作るに当たり既存のCVTベルトとプーリのシステムに独自の油圧制御系を加えたものを使う希望を持っていた。そのために当時ホンダの軽自動車エンジンは回転方向が通常の逆で、入手可能だったCVT(ニッサン提供)と組み合わせられないため、エンジンはスバルが提供した軽乗用車用のものに変更されている。

車は99年に完成し、Coulombと名付けられた。車体はFordから提供されたMercury Sableのアルミコンセプトボディ(94年型の生産型を使ってアルミをプレスしたもの)、モータはUnique Mobility社の75kW級、バッテリはOvonic社のNiMH 18.6kWh。レイアウトはエンジン、CVT、モータが横1列に並び、互いにスプライン接続されているものであった。

またエンジンとCVTの間にはスバルのMT用クラッチが設けられ、バッテリは床下に敷き詰められていた。エンジンの補機類は全て取り外され、ステアリングを始め電動のものが装着されていた。燃費はCityで64.7MPG (≒27.5km/l)、Hwyで62MPG (≒26.4km/l)、航続距離は約300マイル (483km)であった。(UCDにはCDMがないので計測は外部に依頼)エンジンが動くのは、SOCが50%以下になった時と車速が50mph以上になった時のみ。※Coulomb詳細については、添付の技術論文を参照

PHEVコンセプトは当初カリフォルニア州のZEV(Zero Emission Vehicle)規制への対応という面から注目されるようになっていった。バッテリEVと水素を燃料とするFCVが完全なZEVとして認められているが、エンジンで走る車もエミッションの多寡に応じて部分的にZEVとしてカウントするPZEV(Partial ZEV)というカテゴリーが存在し、HEVでも市街地内では排気ガスを全く出さないようにバッテリのみのEV走行が好ましいとの理由から、EV走行が何マイル出来るかによってPZEVのポイントが調整される。

しかし、当時Plug-Inの考え方は余り受けがよくなく、「EVでもないのに外部充電が必要だなんて」と懐疑的な意見の人が多かった。特に自宅に夜間充電が出来るようなガレージのある家が少ない日本や欧州では論外という感じであった。風向きが変わってきたのは、通常の通勤には夜間電力利用による低コストが期待でき、遠出をした時も航続距離が確保できるという利便性が米国で強調されるようになってからで、トヨタプリウスのEV走行機能を利用して(米国向けには切替スイッチが未装着)、プリウスをPlug-InHEVに改造する業者が2005-6年頃からあちこちに出てきている。

CO2低減効果に関しては、EVと同様、地域毎に各種発電所の比率が異なるため一概には言えないが、日本や欧州の一部のように原子力発電や天然ガス発電の比率の多いところではPHEVによって低減できる。しかし米国や中国、インドなどではカリフォルニアなど一部の地域を除き石炭火力の比率が多く、現状では低減効果はあまり期待できないとされていた。しかし、この計算にもいろいろと不確定要素があり、車両のエネルギー効率が高いため、例え石炭火力発電の比率が多く、送電によるロスを考慮してもCO2低減になるという意見もある。

参考文献:
http://docs.google.com/fileview?id=0BwZlGfn1abyXYzZjZGMzYzAtNmQ1Yi00NGE5LWI3M2ItZDZlYWIzNjAyYTg4&hl=ja

2010年3月24日水曜日

Fuji Sankei Business i <2010.3.23>

3月23日(火)のフジ サンケイ ビジネス アイ紙に、車の次世代エネルギーについてのコラムが掲載されました。